3月定例月議会
○『新しい枚方』の姿はどこに…
「市長の平成28年度 市政運営方針」
2月25日から3月定例月議会が開かれ、初日の本会議で伏見市長は平成28年度の市政運営方針を表明しました。重点施策を中心に主な内容を紹介します。
・市駅周辺整備を強調、美術館にはふれず
市長は人口減少への対応は喫緊の課題だとし、出生率を高め、市外への転出者を抑制し、転入者を増加させていかなければならないと、4つの施策を平成28年度の重点を示しました。
市駅周辺事業については、これまでの整備方針と基本的に変わりませんが、街区ごとの取組を示しました。整備を円滑にすすめるために、市民・事業者等をはじめ多様な主体との協働が必要だと、現在、北大阪商工会議所と取組んでいる枚方市駅周辺活性化検討準備会を発展させるなどあらたな協議会をたちあげます。また、庁内体制の強化を図るため、戦略監を枚方市駅周辺整備の総合調整担当に位置づけます。
総合文化施設については「整備をすすめる」と述べるにとどめ、整備スケジュールの遅れにも、敷地内に整備するとしている美術館についても一切触れませんでした。
・子育て応援は不十分
目玉となるはずの子育て支援策は相談機能の充実や他市からの親子近居、同居への3世代リフォーム助成にとどまり、子育てに一層の力を入れたと感じられません。
最後に、子ども医療の高校卒業までの充実、保育料の第2子以降の無料化、中学校給食の全員喫食は、自身がリーダシップを発揮し行政改革を推し進めて「早期実現をめざす」と締めくくりましたが、これらは市長が選挙戦のなかで訴えた重点施策です。多額の経費がかかるとして所信表明では先送りし、総合計画の実行計画(案)等で示すと述べてきましたが、示された実行計画(案)でも「財源確保などの課題解決をはかりながら、実現に取り組む事業」と、別枠扱いで具体の着手には言及しませんでした。
・全国学力テストで競わせる教育の押しつけ
公約とした少人数学級の推進は、言葉すら消え、「グローバル社会を果敢に生き抜く力をしっかりと身につける教育が必要。確かな学力の向上に向けて、全国学力・学習状況調査において全国平均を上回る学校教育をめざす」と、小中一貫教育の推進、小学校高学年は習熟度別の少人数指導を充実すると、学力向上一辺倒。
・高齢施策、市民協働が重要といいながら乏しい中身
高齢者がいきいきと暮らせるまちづくりでは、府立精神医療センターと連携した認知症予防プログラムの推進や、認知症の方とその家族、地域住民、専門家などが気軽に集う場である「認知症カフェ」の設置支援や福祉や医療、介護、予防等を一体的に提供する地域包括ケアシステムの構築にとりくむとしました。
協働のまちづくりでは、市民や市民団体、NPO事業者などさまざまな主体とまちづくりの目標や地域課題を共有し、信頼と適切な役割分担のうえで、協働によるまちづくりを進めることが必要だと、予算の検討段階の公開や市民による各種データの利活用推進、地域担当職員制度の導入などを実施します。
徹底した市政改革では、既存の事務事業や補助金の検証、特に補助金は終期を設定するサンセット方式で時代のニーズに合っているか点検。指定管理者制度で競争を促進するため裁量拡大を検討する。国民健康保険料の適正な賦課と徴収強化、公立保育所民営化計画の策定と保育料の改定を検討する。今後、老朽化する施設の、機能見直し・最適化(統廃合等)の計画を策定するとしました。
○一般会計は過去最高の1394億円…新年度予算
・市長公約の子ども医療費助成高校までの拡充は計上なし
一般会計当初予算額は、対前年度比128億円、10.1%増の1394億円と過去最高の予算額となっています。
その原因の一つは、総合文化施設整備事業用地取得で74億円、御殿山小倉線の整備8億円、京阪本線連続立体交差事業で35億円の計上です。
その一方で、収入として市税は,対前年度比5億600万円減の545億1700万円。その内個人市民税は1億1500万円の減,法人市民税は5億1900万円の減となっています。
一般会計の主な歳出の状況を見てみると、人件費総額(前年比伸び率)217億2千万円(前年比▲1,2%)、扶助費総額では347億77百万円(3,4%増)、投資的経費は149億95百万円(133,2%増)、維持補修費2608百万円(18、5%増)となっています。
減となっている人件費は退職手当を除くと前年度に複数の選挙や国勢調査が実施されたことなどによるものとしています。
・市民の願いとはかけ離れる子育て支援、学校教育
主な事業では、浸水対策の推進として、浸水被害を軽減するため、新安居川・溝谷川ポンプ場の排水能力向上や船橋本町雨水支線の整備、さだ・楠葉排水区の雨水貯留施設等の整備推進。(23億1069万5千円)
24時間健康医療相談窓口の設置として、市民の安心を確保するため、医師・保健師・看護師等の専門相談員が24時間対応する電話相談窓口を開設。(3244万円)
妊娠・出産・子育て環境の充実で、妊娠届出時に保健師による全数面接を実施、地域を担当する保健師のPRや母子保健コーディネーターの相談体制の強化。(2045万3千円)
学力向上の取り組みとして、小中一貫教育実施のため、全中学校区に専門のコーディネーターを配置、中学校英語教員による小学校6年生を対象とした外国語活動の教科担任制を導入するなど。(1億1053万3千円)
スクールソーシャルワーカーの増員による不登校対策等の充実で、虐待や不登校など子どもの抱える課題の解決に向け、専門的な資格を有するスクールソーシャルワーカーを増員して体制の強化(1173万2千円)など。
伏見市長は昨年の市長選挙で、第2子以降の保育料無料化、子ども医療費助成を高校卒業まで延長、中学校給食全員喫食、少人数学級編成を6年まで、3年生までは30人以下学級などを公約したのに、新年度予算にも長期財政計画にも入っていません。
○苦しい市民の暮らしを語らぬ市長
新行政改革で市民に負担押し付けるな…
「市政運営方針」に対する広瀬議員の代表質問
「市民生活は一段と厳しくなっているにも関わらず、市民の暮らしを応援する姿勢が感じられない。どんな現状把握をしているのか」との問いに、「どんな状況であっても市民福祉の向上に努めるのが自治体の責務」と、状況認識を語らずじまい。新たな行政改革実施プランの、4年間50億の財政効果を見込んでいるが市民負担増やサービスの切り捨てはどれほどか。と問いましたが「取り組みの中で」とあいまいな答弁です。
・市駅再整備は市民合意で行うべき
総合文化施設はこれ以上の遅れは許されない
総合文化施設のオープンが「総合計画」では遅れていることを確認し「スピード感というが、現在進行中の総合文化施設の整備は遅れ、美術館では未だ方向性も見出せず市政運営方針でも全くふれていない。都合のいいことだけ発信し、悪いことは発信しないのは、市長が公約としてきた行政情報公開を推進する姿勢にも反する。スピード感というなら総合文化施設の平成31年度中の開館を譲らず、何としてもやりとげるべきだ」と指摘。
さらに市駅再整備は、関係者はもちろん全市民的な合意が得られなければ、前には進まない。成熟する時代にふさわしい潤いとゆとりのある再整備に向けての道筋をつけるようにと求めました。
・市民協働の街づくりを
「市民参加の条例が2度にわたって審議会の答申も得ながら、提案に至っていない、行政の責任と役割分担を明確にして市民協働を 進めるべきではないか。地域との協働は生涯学習市民センターを拠点に進めるべき」と追及。
「条例制定ではなく、様々な活動主体と意見交換を行いながら協働の取り組みを進めていくことを優先する。制度の課題については、校区コミュニティ協議会への活動補助金等は、より地域の主体性を高める補助制度となるよう見直しが必要と考える。生涯学習市民センターを市民協働の拠点にという指摘だが、まずは、地域の窓口であるコミュニティ連絡協議会のブロック会議に職員を参加させ、情報共有を行うことから始めていきたい」との答弁でしたが、「公の施設は市民の財産だ。生涯学習市民センターを指定管理で民間に任せるのでなく大切な財産をもっと有効に活用すべきで、市民とともに考えるように」と強く求めました。
・学力テスト対策より子どもへの豊かな教育を
「グローバル社会を果敢に生き抜く力をしっかりと身につける教育が必要。そのため、確かな学力の向上に向けて、全国学力学習状況調査において全国平均を上回る学校教育をめざす」とする市長に対し「各地で全国学力テストの平均点を競争することが目的化し、教育がゆがめられている。枚方でもすでに学校では学力向上委員会なるものが設置され、テスト対策に重きがおかれている、全国学力学習状況調査の全国平均を上回ることを市長が宣言すれば、教育現場はそれを至上命令と受け止め、よりテスト対策へと明け暮れていくのではないか」と指摘。
「小中一貫教育を柱に、学力向上に向けた取組を進め、その積重ねにより、全国平均を上回るものと考えている」との答弁でしたが「結果として不登校やいじめが増えるのではないか。学力テスト一辺倒の教育は止めるべき」と強く求めました。
また、小中一貫教育では小学校に英語教員を派遣するため中学校は講師が対応するなど課題が多く、急いで進めるべきではない。学校司書は公約通り小中全てに配置すべきと主張しました。
・平和都市の市長として行動を
市長は「悲惨な戦争の経験を風化させることのないよう、戦争の恐ろしさや平和の尊さを伝える。核兵器の廃絶を求める」と述べたが、そのために憲法9条を守らねばならないと考えるのかと問いました。
「市は憲法の理念にそって」と主語を枚方市に置き換えての答弁でした。
戦争法について市の責務を問い、憲法の理念に反する場合は異議を唱え、協力を拒否するか、市民の安全を守るためにも秘密保護法は廃止すべきではないかとせまりましたが、「仮定の問いには答えられない。秘密保護法は国で議論される問題だ」と答えました。
市も策定した国民保護計画は武力攻撃に備えた仮定の計画です。決して国で議論して枚方で議論はいらないというものではありません。平和都市の市長として積極的に行動をと強く要望しました。
○平成28年度予算特別委員会
予算特別委員会は5日間の日程で開かれ、共産党議員団からはのぐち・松岡議員が質疑を行いました。
のぐち議員
市役所内のハラスメント防止対策をとりあげました。職員間のアンケート調査を行って実態把握と対策を講じようとしていることは評価しつつ、調査の継続と適切な対応を求めました。特に、パワハラを行う上司が部下を評価する矛盾をただしました。
また、人事評価に給与を反映させるやり方も厳しく批判、ただちにやめるべきと求めました。
学校教育では、支援学級への教員配置について講師や経験の浅い人ではなくベテラン職員の配置が必要と指摘。
就学前児童の保育所待機問題と並んで留守家庭児童会室の待機も深刻だとして定員の拡充を強く求めました。
生活保護ケースワーカーの非正規職員の割合が全体の24%と高い点を指摘、待遇改善とともに経験・知識豊かな職員確保のために福祉職場で働く社会人を正職員採用するよう求めました。
特別会計では、高すぎる国保料を取り上げ、生活保護基準をわずかに上回る世帯などにも一部負担金減免をと主張。さらに国保の広域化問題に触れ、市民の暮らしを守る立場で市が大阪府に対しきちんと意見を上げることを求めました。
松岡議員
大規模災害時に設置される避難所について、障害をもつ子どものために第一次避難所に福祉避難所的な配慮を求めました。
また、4月からの中学校給食の申し込みが喫食率12%にとどまっている…を取り上げ、食育をすすめる栄養士の複数配置と喫食率の向上を求めました。学校給食は全員喫食が基本であると主張をしました。
中学校3校に学校図書館司書を配置し、平成28年度中に中学校7校に配置する問題で、中央図書館からの非常勤の配置ではなく、各学校にきちんと常勤の司書配置が必要と主張。
市が待機児童解消策として小規模保育所を2か所直営で開設することを取り上げ、小規模では3歳児問題が生じる点を質しました。小規模の整備を進めながら考えるという市の姿勢を批判。公立の民営化でなく効率を残しながら公私一体で問題に取り組めと主張しました。
一般会計と国民健康保険特別会計予算に反対
伏見市長は昨年の市長選挙で、第2子以降の保育料無料化、子ども医療費助成を高校卒業まで延長、中学校給食全員喫食、少人数学級編成を6年まで、3年生までは30人以下学級などを公約したのに、新年度予算に具体に示されないのは市民の願いに背を向けるものである。
産業振興では、事業所数が560、従業者は3000以上減少しているにもかかわらず、積極的な小企業者支援策を実施しないことは問題である。
教育では、小中一貫教育として小学校教諭免許がない中学校の英語教諭が小学校で英語を教えることは資格上からいっても問題があり、時期尚早である。支援学級については、実態に見合った適切な人員を配置すべき。奨学金では予算額を減額し、就学援助では他市で実施している4月認定に取り組まず、文部科学省が支給基準にしているPTA会費やクラブ活動費、生徒会費を財政が厳しいとして拡充しないなど、苦しい家計の中で子育てしている市民に寄り添う気持ちが無い予算である。
保育については、公共施設を活用して38人の定員増を図る小規模保育園事業を直営で実施するが、通年の待機児解消を目標とした「待機児童解消ひらかたプラン」を作成しないこと、定員外保育の改善を図るためにも保育士の雇用状況を改善しないのも問題である。
留守家庭児童会室については、既に待機児が発生しているにもかかわらず、その対策がとられていないこと。
以上の理由で、子育て支援・教育、くらし応援についても全く不十分なばかりか、保育所民営化を推進するなど新行政改革実施プランが前提となる一般会計予算については反対する。
国民健康保険特別会計については、1人世帯では年収200万円以下の世帯でも保険料が引き上がり、一定の所得がある層でも医療介護分は25年度から毎年、トータルでは3年連続で12万円増加している中で、この間実施されてきた3億円の繰り入れで約97.7%保険料が減額になるにもかかわらずが行われなかったことから反対。
病院事業会計については駐車場有料化を撤回すべきですが、健全な病院経営を要望し賛成とする。
○意見書
議員団は「安全保障関連法の廃止を求める意見書」を提出。28日の最終日に採決が行われましたが、自民、公明、未来・維新の反対で不採択になりました。
|